監督:小沼雄一/YUICHI ONUMAみなさん“キジムナー”を知っていますか?沖縄に古くから言い伝わる木の精霊の呼び名です。もし沖縄に行くことがあったら現地の老人に「キジムナーをご存じですか?」とぜひ聞いてみてください。必ず「見たことある」と答えるはずです。初めそう聞いたときは冗談だと思っていたのですが、当人はかなり本気だったのでショックでした(二十一世紀なのに!)。おそらく「本当だ」ということを後世に伝えることが、沖縄の人たちにとってとても大切なのだと思います。そういう意味でキジムナーは妖怪というより、もっと自然に根付いた幻の生き物といった方がニュアンスが近いかもしれません。本当と嘘の境目にいるもの……それがキジムナーです。 キジムナーは赤髪らしいとか、上半身しかないとか、伝承で漠然と伝えられているだけなので、実際にどんな姿形をしているのかはわかっていません。ですのでこの映画の中のキジムナーは今回だけのオリジナルですが、さらに私はキジムナーの存在そのものも独自に解釈しました。キジムナーは「見つめるもの」ではないかと。 そのイメージの原点は映画「エクソシスト」です。「エクソシスト」は、悪魔に取り憑かれた少女が凄まじい形相で悪態をついたり人間離れした奇行を繰り返すのに対し、神父たちが必死で悪魔払いをするという内容ですが、ラスト近くで老齢の神父が心臓発作か何かで突然死んでしまうシーンがあります。その場面で私が最も印象に残ったのが、死んだ老神父を見つめる少女(悪魔)の表情です。悪魔の素顔とも呼べる“無表情すら超えた無表情”を今も鮮明に覚えています。キジムナーは悪魔よりも愛嬌があるので印象はずいぶん異なりますが、人間の生き死にに対する目線は似ているのではないか・・・というのが私の解釈です。 キジムナーの視線を感じながら物語が始まり、そして、終わる。「夏の思い出」はそんな映画になりました。 |
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■作品歴
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